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山形県で総合診療医を目指しています。日々の振り返りをご笑覧ください。

日本地域医療学会の報告

日本地域医療学会、無事勤めを果たしてきました。
持って行った名刺が全て捌けるという貴重な経験をさせてもらいました。
感想を少し置いておきます。
 
本学会のホストは「地域医療」を安心して語る場を作りたかったんじゃないかな、と感じました。
学会のコンテンツも総じてですが、これから地域医療に挑む人たちの背中を押すようなコンテンツに溢れていました。
(研修医の相談室・ライフキャリアの相談・地域医療の教育など)
地域枠も踏まえて地域医療をやりたい/やらざるをえない医学生・初期研修医のために、がっぷり3日間地域医療を語る会というのは確かに今までなかったかもしれません。
そういう意味で、若者の背中を押すために良い機会だったかと思います。
 
自分は地域医療教育について、自治医大卒の立場でいくつか話してきました。
振り返るとやっぱり自治医科大学って特殊というか、約100人がみんな地域でお勤めをやるって凄い環境なんですよね。他大学の地域枠は120人中の20−30人というような若干のマイノリティで、横を見るとやはり比較してしまう。自治医大は横で全く比較がなかったし、大学も地域医療を推すようなカリキュラムをいくつか用意していた。
そんなそこそこ環境の良かった卒前教育を受けていたにもかかわらず、やっぱり義務年限の前半あたりはもがいてました。もっとメンターとか真っ正面に先輩がいたらきっと自分のキャリアももう少し舗装された道を歩めていたかもしれないと思うと地域枠で今もがいている学生〜初期研修医の気持ちは少なからずわかるつもりです。
地域医療教育という言葉には様々なレイヤーがあって、一概に語ることはできません。だからこそ、それぞれの立場から地域医療のシステムやそこに立たされている若者の心情にそって支援することが求められているんじゃないかと思いました。
山形の地域枠で困ってる人がいたらいつでも言ってください。自分でよければ力になります。
 
一方で不満だったのは、この学会の学術的な意味合いについてです。
地域医療学という学問分野は日本ではあまり確立してません。Rural Medicineはオーストラリアとか相当距離の離れたエリア(Rural Area)における医療提供の文脈で色々研究されているけど、日本における地域医療はそれとは一線を画していると感じています。
すなわち、「物理的な距離」ではなく「強烈な人口減少+高齢化」による限られたリソースの中でどれだけ適切な医療提供ができるか?という観点が1番研究しやすいと思ってます(まだまだ勉強不足ですが)。
しかし、医療提供体制というストラクチャーだけで地域医療は語れないのも事実です。ここに人口減少・高齢化の中でどんな社会資源が生きているのか・公衆衛生的な対策はできるのかなど、多くの観点が含まれるはず。
ここら辺はかなり熱い領域だと思うんだけど・・・今回の学会では一切ポスター・オーラル含めて学術発表がありませんでした。
学会を銘打つのであれば、この部分の研究の底上げとか「地域医療学の日本での定義づけ」とか色々考えることあると思うんだけどなぁ。
こうやって書いてたら自分は結構関心があるテーマみたいなので、1人でコツコツ考えていようと思いました。
 
明日からすぐ臨床に活かす、という感じではないものの、地域医療についてみっちり考えることができた貴重な機会でした。
自治医大卒の遺伝子は自分の中で結構存在価値が出てきました。地域医療を実践しつつ、未来に何ができるか考えていこうと思います。