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山形県で総合診療医を目指しています。日々の振り返りをご笑覧ください。

大学院報告:学位ゲットだぜ

卒業式は業務で出られませんでしたが、無事学位記が届きました。
これで正式に博士を名乗れます。
 
博士課程に行こうと思ったのは、忘れもしないHANDS-FDFです。受講したなかで博士課程を考えるきっかけが2つありました。
1つは「Faculty Development」のFacultyが大学教員を指し、研究を円滑に進められる能力がFDに含まれているということ。てっきり教育とビジネススキルのことを指していると思っていたので、「やはり研究の指導ができないといけないのか…」と改めて向き合うことになりました。
もう1つは、フェロー同期のダテさんとの会話でした。市中病院で勤務している総合診療医である彼が「来年大学院受けようと思うんよ」と話してくれた時、目から鱗が落ちました。「そうかー医局に入らなくても大学院に行っていいんだ」と気づいた時、初めて人生の選択肢に上がってきた気がします。
そんなきっかけの直後にコロナがあり大蔵村でなんやかんやあり、ふっと一息ついたところで「最後の大挑戦に挑むなら今なんじゃないか?」と思いたったのでした。
 
大学院の3年間はいろんなことに気付かされました。
自分がペタゴジー的な態度で挑もうとしていたこと、結局これからの学びはひたっすら試行錯誤を繰り返し続けるしかないこと、思った以上に論理的な文章を書くというのは難しいことなどなど。
そういった様々な気づきを経て、”研究”の一歩目を踏み出すことができたこと。これだけで大学院に進学した価値はあったと思います。
大学院を経て、思ったよりも研究活動を経て見えない何かが見えるようになることは面白く、研究活動は長いスパンで挑戦し続けたい領域の1つになってくれました。これからはプレーヤー、マネージャー、教育者に加えて細々ながら”研究者”という4軸目を形成していこうと思っております。
 
可能であれば、自分が実践し挑戦している「総合診療」「地域医療」というまだまだ得体の知れない領域を、データ研究から少し見えるようにしてみたい。山形という田舎だからこそ、日本の未来が見える……そんな研究をやってみたいなんて夢を淡く持ち始めています。
どうなるかわかりませんが、「地域医療の研究者」になってみたいと思った初春でした。

読書ログ: ウイルス学者さん、うちの国ヤバいので来てください

東京大学 古瀬先生のエッセイ。たまたま彷徨いた図書館で目があってしまったので借りてみたところ、色々味わいどころがある内容だった。
 
・COVID19の捉え方
世の中には数多くの感染症がある。これは自分も知識レベルで知っていた。
しかし、実際にエボラ・ラッサ熱など多くの感染症対策に従事した古瀬先生の記載を読むとCOVID-19は突然降ってきた危機ではあるが、人間が繰り返し対峙している感染症危機の1つに過ぎないという印象を持つようになった。
じゃあ自分は2020−2022年に奮闘していたのはなんだったのか。
おそらく感染症危機は「身に降りかかってくる事態」では無かったから、全く予想外でどう動けばいいかわからなかったから大いにテンパったのだと思う。
そうなると古瀬先生のように場慣れしている人の方がテンパらないし動けるのも納得である。
彼ほどの経験を国内で積むことは難しく、そうなると国内の医療職は次のパンデミックの時にCOVID-19の経験のみで奮闘しなければいけないのだろう。それしかないから仕方ないにしても、もっと上手に危機を乗り越えるための訓練・思考実験がまだまだ必要そうだと感じた。
 
・ほぼ同年代というのにびっくり
「大学時代はバイトにバンドに〜〜〜」なんてくだりがあるが、同じような大学生活を送っていたにもかかわらず、その後半戦の違いにびっくり。
古瀬先生がフィリピンに行って研究活動をやったり学生中にPhDをとったりしている間、自分はますます部活に明け暮れていた。
その背景には所属大学の気風とか制度の違いがある気がして、入った大学でやはり成長や進路の方向は変わるのかもしれないと感じた。自分が母校以外のところに入っていたら、果たして地域医療をやっていただろうか・・・。
 
同世代の活躍、そして若い世代の活躍を見聞きする機会が増えてきた。それをジェラシーなく受け止められるようになったのか、牙が抜けて腑抜けたのかそれとも丸くなったのか。
自分らしく丸く尖り続ける努力はしていきたいなと思った朝でした。

シネメデュケーションをオンラインでやるには

久々の教育ネタです。
シネメデュケーションとは、シネマ+メデュ+エデュケーション=映画で行う医学教育という意味です。
詳細は孫先生の論文をご確認ください。
 
さて、このシネメデュケーションを受けたことはあるものの、なかなか実践する機会はありませんでした。
だって映画見ないんだもの。
なのでちょっと手法としては苦手としていたのですが、今回オンラインで試す機会があったのでその備忘録を作っておこうと思います。
 
オンラインでシネメデュケーションを行うためには、全員で同期させながら動画を見ることが必要です。
ちなみにオンライン会議はZoomを使って行いました。
動画を共有するために目をつけたのがAmazon primeのウォッチパーティ機能です。
この機能を使えばprime videoに格納されている映画やTV番組を同期させながら視聴することができます。シネメデュケーションを行うために考えなければいけないのが著作権です。prime videoの本機能であれば、公的に共有が可能なツールですので見れる動画は著作権の問題はクリアできています。やったぜ。
しかし、問題は参加者全員がprime会員である必要があること。今回の参加者はprime会員でない方がいたのでこの手は使えませんでした。残念。
 
prime videoを自画面で再生して、それを共有しようとか考えちゃダメですよ。それって著作権とかコンテンツの侵害ですからね!
ちなみに、この操作をしようとするとprime videoの画面がブラックアウトするようになっています。さすがです。
 
そうなると「すでに公的に共有されている状態の動画」を探す必要があります。
そこで出てくるのがyoutubeですね。助かる。
自画面でyoutubeを再生→Zoomで画面共有というステップで、youtubeの動画を同期させながら共有することができます。
問題としては、Zoomを挟むことで数秒の時差がでうること・相手の回線状況では動画の再生ができなくなる場合があることです。今回の参加者でも1人ネット回線が不安定な方がおり、動画の同期ができませんでした。その方はスマホのGBに余裕があるとのことで、youtubeリンクを送って手元のスマホで見てもらうことで対応しました。
 
……ということで、オンラインでシネメデュケーションを行うための答えとしては「youtubeを画面共有」となりました。
 
繰り返しになりますが、シネメデュケーションの前提条件として「コンテンツの権利を侵害しないこと」です。
一方で、どのラインだとコンテンツの権利侵害になるのかはグレーゾーンが広がっています。
動画を購入してオンサイトで複数人で共有する、これは良さそう。
でもそれがお金を払って参加するセミナーで行われたらアウトっぽい。
動画を購入して自分で編集した動画をオンラインで共有するのは? うーーん、アウト寄りな気がする。
ここら辺は毎回注意していくことが最も大事なのかなと思いました。
 
参考に今回自分がどう考えたか。
今回の動画教材は横浜市が提供しているACPの啓発動画を使いました。
こちらはyoutubeで無料公開されており、市町村が公開しているのであればセーフかなぁ……と判断しました。
が、完全にセーフかどうか自信がありません。(多分大丈夫だとは思うんだけど)
ここで記載することで横浜市に怒られたり関係者に注意されたら、きちんと謝罪したいと思います。
良い動画教材ですので、興味のある方がいればぜひご覧ください。