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山形県で総合診療医を目指しています。日々の振り返りをご笑覧ください。

抄読会:プライマリケア医に送る2019年の研究20選

FBで流れてきた論文”Top 20 Research Studies of 2019 for Primary Care Physicians”を読んでみました。目から鱗がポロポロです。
20Point+αをざっと訳したので後ろの方に載せておきます。

個人的なポイントをいくつか。

・降圧薬は寝る前に飲め
 朝仕事がある人たちにも有効な指導なので、明日から取り入れられそうな内容。
 ついでに「よく眠れた!」とか効果も出たりしないかな。そしたら睡眠薬の処方も減りそうなんだけど。

・75歳以上のスタチン一次予防は不要
 安心して減薬を勧められます。血管リスクの高い人種を対象にした研究が元なので、日本人の女性なんかは遠慮なく減薬できそう。

・低容量のイブプロフェンでも鎮痛効果は高容量と一緒。(400mg/回で十分)
 逆に言えば、400mgまでは出してもいいってことですよね。
 日本の保険診療だと400mg/回でも疑義紹介が来るので、200mg/回でも変わりない、だと嬉しいんだけどな。

・2型糖尿病にはメトホルミン。2剤目にはSU薬、チアゾリジン、GLPー1受容体拮抗薬やSGLT2阻害薬(ジャディアンス)
 一番の衝撃。いよいよSGLT2iの推奨が上がってきた。
 新規薬剤は長期の使用経験で問題ないことをきちんと見極めてから、と思っていたけどその長期経験が溜まってきたということなんでしょう。
 やっぱりメトホルミン、という流れは今後も変わりなさそうです。

最近コロナコロナだったので、久々にアップデートできた感覚です。
忙しい中でも自身のアップデートは欠かさない余裕を持ちたいなと思った春の日でした。

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以下、deepl翻訳を元に若干手直ししたポイントの訳です。
<高血圧>
・降圧薬はに内服した方が、心筋梗塞心不全脳卒中・循環器関連の死亡率が低下した。
・自動血圧測定器は有効

<行動医学>
・不安障害への投薬で、セロクエルパキシルベンゾジアゼピンは効果がなく、サインバルタリフレックス・アタラックス・ジェイゾロフト・リリカ・レクサプロは効果がある。有効性と忍容性としては、サインバルタ・リリカ・イフェクサーSR・レクサプロ。
・受診した多くの患者は、医者に伝えていない様々な症状を抱えている。ルーティンとして、「何かお役に立てることはないですか?」と声をかけよう。
・うつの治療において、早期に反応しないからといって抗うつ薬の変更を急ぐべきではない。(12週待つと半数弱が反応してくる)

<循環器>
・空腹時でも非空腹時でも、LDLC・HDLCはほとんど変わらない。TGは空腹時と比較して25mg/dLほど上昇する。また、心血管イベントの反映も変わりなかった。
・75歳以上のスタチン内服ではほとんど一次予防効果がなかった。また、脳卒中・がん罹患率・癌死亡率にも影響しない。
・健康な高齢者でなければ低容量アスピリンを一次予防で使用するべきではない
・DMの患者への低容量アスピリンの効果ははっきり分かっていない

<がんスクリーニング>
・2年おき10年間の便潜血スクリーニングはCFと比較して検出率は同等だが、罹患率や死亡率は減らせていない。コスト面を考えると有効。
アスピリン、抗凝固薬、NSAIDSは便潜血に影響しない
・大腸癌の家族歴はがんリスクを上げる

感染症
・バイタルサインが正常で、肺の検査所見が正常であれば、市中肺炎は除外される。
ペニシリンVなら、溶連菌の抗菌薬投与は5日間でも十分(ペニシリンV800mg5日間はペニシリンV1000mg10日間投与と同等)
・小児の風邪症状は3週間続く。子供のかぜの多くは軽症で、治療を必要とせず、学校を休む必要もない。

<その他>
・経口抗凝固薬の中では、アビキサバンが最も上部消化管出血リスクが低く、PPI併用でリスクを下げられる。
(リバーロキサバンが最もハイリスク)
・低容量のイブプロフェンでも鎮痛効果は高容量と一緒。(400mg/回で十分)
・水痘・帯状疱疹ワクチンは、シングリックス(GSKの遺伝子組み換え型ワクチン・2回摂取)がゾスタバックス(乾燥弱毒生ワクチン)より効果がある。
・運動は転落リスクを下げる(週2−3回の中等度〜高度の運動)

ガイドラインより>
・AF患者における脳卒中の予防にはワーファリン、アスピリンよりもDOACが優先。リスクスコアで評価を行う(CHADS-VASCスコア)
・2型糖尿病にはメトホルミン。2剤目にはSU薬、チアゾリジン、GLPー1受容体拮抗薬やSGLT2阻害薬(ジャディアンス)
乳がんのスクリーニング検査は50-74歳で2年ごと。75歳以上は推奨しない。