YAMAGATAxGP

山形県で総合診療医を目指しています。日々の振り返りをご笑覧ください。

口唇ヘルペスについて考えてみた。

自分のログにもなるので時間がある時には記事にまとめてみようと思います。

今年から社会人になる女性が受診されました。理由は「ヘルペスができた」。
皆さまもよく見る、口唇ヘルペスというやつですね。
高校生以来、久しぶりにできたとのことです。本人もヘルペスであることをわかっているらしく、軟膏の処方を希望されました。
ヘルペスも1か所で、症状も軽快傾向にはあるとのこと。
アラセナ軟膏を処方して外来は終了しました。

さて、この対応で本当にあっていたのでしょうか?
口唇ヘルペスには抗ウイルス薬の内服、と記憶していたのですが……高いんですよね。症状も落ち着いてきているし、ここで内服を薦めるべきか迷ってしまいました。
知識のアップデートも兼ねて、成書を確認してみることにしました。

本日の臨床サポートで検索してみると……
・単純ヘルペスウイルス1型感染症、が正式名称(そういやそうだった)
・初感染時には歯肉口内炎咽頭炎を来すことが多い。
・基本的にはアシクロビル内服で治療する。
・紫外線が再発リスクになるので、日焼け止めクリームに予防効果がある。

あれー、軟膏って効果はないんでしょうか。
お約束のUpToDateも引いてみることにします。

UpToDateより勉強になったこと
・英語でCold Soresと言う。(なぜ冷たいんだろう?)
・初回感染時には無治療よりも抗ウイルス薬投与(アシクロビル400mg1日3回 7-10日間)が望ましい。
・self-limited diseaseである。
・前駆期に見つかった時には症状を短くする目的で抗ウイルス薬内服が選択肢となる(famciclovir1500mmHg単回投与、バラシクロビル2g2回1日)
・4回/年以上再発する人は、長期管理がよいかもしれない。
・軟膏については記載なし。

やっぱり基本は内服加療のようです。
では、国内で処方されている抗ウイルス薬軟膏の立ち位置はいかがなものなのでしょうか?

「抗ウイルス薬軟膏を使用することで、無治療と比較して早期に症状が落ち着くのか」という疑問が生まれました。
軟膏の文字を見つけるため、お次は論文をあたってみます。
PubMedでCold Soresを検索し、ようやく見つけました!

2002年と古めではありますが、アシクロビルクリームの効果をみた大規模RCTです。
結論だけ申し上げると、
 ・アシクロビルクリームを塗ったほうが12時間ほど早く治癒する。
 ・ヘルペスの痛みも12時間早く落ち着かせる。
 ・目立った合併症はない(頭痛、口唇の荒れなど)
……という内容でした。
製薬会社が援助した研究なので、そこだけ頂けないですが。

色々と調べましたが、実臨床レベルに落とし込むとこんな感じかと思います。
 ①平均5日くらいで自然軽快する疾患である
 ②初感染の時にはアシクロビル内服
 ③年4回発症して困っている方も内服をすすめる
 ④再発例・年3回以下の方で、希望があれば抗ウイルス薬軟膏を処方する

まだ調べたりない部分もあるかと思いますが、また時間がある時に追って調査をするつもりです。