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山形県で総合診療医を目指しています。日々の振り返りをご笑覧ください。

ポリファーマシーを多職種で理解する

当地域で開催しているポリファーマシーの勉強会が3年目に突入しました。
今まで各論を取り上げていたので、久々に初心に返ろう!ということになり総論を話してきました。
2つほど苦心した点をご紹介します。
 
・多職種で取り組む壁
 ポリファーマシーについては、医師・患者だけではなく薬剤師も多く関わる分野です。個人的にはケアマネ・介護士・リハ・栄養士なども患者さんの生活面から関わっていいのではないかと思っています。
 多職種でかかわる壁としては、「知識」なのではないかと今回考えてみました。
 薬の名前・その効果・なぜ飲まないといけないか。ここらへんが専門知識として口出しできないためポリファーマシーに積極的に介入できないのではないか。
 確かに、薬理学・医学の知識があった方が話は進みやすいと思います。
 一方で患者の生活や内服の状態、ADLを知っているからこそ考えられる視点もあるはずです。
この壁を突破した上でみんなで考えるワークショップを作りたい!
 
どんな仕掛けを用意したか? 答えは簡単です。
「みんな知らない薬を使えばいい」
今回は5剤内服している高齢者のケースを想定しました。5剤全て自分のオリジナルの薬剤です。
ケツアツサガール・メマイストップ・ケットウサガール・ホネカッチン・スヤスヤ、なんとわかりやすいネーミングでしょう!(妻には大爆笑されました)
作用や副作用もオリジナルなので、全ての参加者は平たい知識で挑むことができます。このおかげで、今までの勉強会よりも知識不足で発言しにくい空気は払拭することができました。
 
・解釈モデルを大事にする
 ポリファーマシーを解決すべき理由はいくつかあります。
  • 高齢者における転倒・虚弱・死亡リスクになる
  • 薬剤有害事象が増加する
  • アドヒアランス低下につながっている
  • 日本の医療費が高騰する原因となっている
もちろんどれも大事な理由ですが、個人的にはそのせいで患者個人の思いが埋没してしまうのもよろしくないのではないかと考えています。
どんな薬でも飲み続けることは大変です。忘れないよう気を付けて、生活の一部となるよう心がけ、忙しい時間を縫って受診し、自分のためにがんばって続けてきた習慣です。
 それを「もう不要だからやめますか」の一言で終わらせるのは、あまりにせつないのではないでしょうか。
 薬に込められた解釈モデルを大事にしながら、その人にとってベストな処方を探る。
 そんな心がけが必要なのではないかと考えています。
 この思いはもちろん医師・薬剤師だけではなく、患者に関わるケアパーソンが全員共有すべき思いではないでしょうか。
 
ただ知識を話すだけではなく、明日から取り組めるような勉強会を作っていく。
3年経ってまた気持ちを新たにがんばっていこうと思った回でした。