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山形県で総合診療医を目指しています。日々の振り返りをご笑覧ください。

日本の緩和ケアでステロイドはどう使われているか?

抄読会を行ったので折角だから共有します。

Physician-Reported Corticosteroid Therapy Practices in Certified Palliative Care Units in Japan: A Nationwide Survey

PMID: 22734663  DOI: 10.1089/jpm.2011.0534

J Palliat Med. 2012 Sep;15(9):1011-6; quiz 117-8. doi: 10.1089/jpm.2011.0534. Epub 2012 Jun 26.


【抄録】

(背景)コルチコステロイドは進行がん患者の治療における症状緩和で一般的に使用されてきたが、全国規模で医師による報告や緩和ケアセッティングでのコンセンサスを証明した研究は少ない。

(方法)医師の使用法と、食欲不振・倦怠感・呼吸困難に対するコルチコステロイドの使用法を明らかにするため、日本の緩和ケア病棟178ヶ所に質問表を送付した。

(結果)124人の医師から返信がきた。

 終末期のがん患者におけるコルチコステロイドの使用率は80%だった(倦怠感 80%、食欲不振 80%、呼吸困難 80%)。医師たちの使用法やコンセンサスは様々だった。

 患者が死に瀕している時に、回答者の46%は漸減せずにコルチコステロイドの投与を中断する。33%は減量するが投与を続け、21%は減量も中止もしない。

 投与量については、47%は嘔気についてはベタメサゾン換算で2mg/d以下を選択し、51%2-4mg/dを選択した。

 投与期間については、50%が予後にかかわらず呼吸困難がでた際に投与を開始し、30%が予後3ヶ月以下と考えられる時に投与を開始した。

 副作用の管理については、48%が過活動型せん妄の患者に対してはコルチコステロイドの投与をあまりせず、44%は注意して投与する。

(結論)日本の緩和ケア病棟でコルチコステロイドの投与は一般的だが、統一された使用法はない。スタンダードを決めるためのさらなる研究が必要である。


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こういったスタンダードを確立するのはもうしばらく時間がかかりそうです。
セッティングごとに悩ましい場面も多々ありますが、それでもステロイドで元気がでた方をみると使うべき時にはしっかり使いたいなと感じます。