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山形県で総合診療医を目指しています。日々の振り返りをご笑覧ください。

上司との関係を成人学習理論で考える

皆さんはボスマネジメントで困っていませんか?
社会の変化に合わせて上司-部下関係も少しずつ変わってきています。ボスマネジメントという言葉が出てきたのもそんな社会背景を反映した影響でしょうか。
 
自分もボスマネジメントについて色々思うところはありましたが、成人学習理論を学ぶことで気持ちをスッキリさせることができました。
誰かの役にたつかもしれないので、少し紹介したいと思います。
 
まずは成人学習理論についてです。
学びの形は人それぞれですよね。やる気も違えば目的も異なります。
そういった「学び」そのものを理論化してどのように支援するか考える学問、これが教育学です。
この教育学、様々な概念があるのですが……誤解を承知で、わかりやすさのために”主体性”という軸で3つに分けます。
 
 受動的な学習者のための理論=Petagogy
 能動的な学習者のための理論=Andragogy
 超能動的な学習者のための理論=Heutagogy
 
この3つのうち、成人学習理論はAndragogy・Heutagogyのことを指します。
Petagogyは言われたからやる、小学校の教育のようなイメージです。教育者の仕事は経験値のない学習者に効率よく知識を与えること・学習を楽しんでもらうことになります。
Andragogy・HeutagogyはPetagogyに比べて学習意欲が能動的になってきます。
経験値が溜まってくると学習者の中に疑問や課題が生まれるようになります。自分の中に芽生えた疑問・課題を解決するために学習者は学びを求め、教育者はその学びが十分に働くような支援を行います。これがAndragogyです。
更に学習者のやる気が高まってくると、学習者は自分でメニューを考えるようになります。教育者の役割は教え導くことではなく、学習者のやる気を支援したり躓いた時のサポートがメインになります。この段階をHeutagogyと呼びます。
 
私達はずっと子どものままではいるべきではありません。誰かが手取り足取り教えてくれる時はいずれ終わるべきなのです。
Petagogy的な学習スタイルから、Andragogy・Heutagogy的な学習スタイルへ変わっていくことが生涯自身を成長させていくために重要だと考えます。
 
ここまでは理解できましたか?
まだハテナが浮いている方は是非こちらの記事も読んでみてくださいね。
(総診仲間のブログへ飛びます)
 
さて、話をボスマネジメントに移しましょう。
先程の3つの学習理論をわかりやすく書くと下記のようになります。
 
Petagogy:学習者は何を学んでいいかわからない/教育者は手取り足取り指導する
Andragogy:学習者は自分の疑問・課題を解決しようとする/教育者は解決に役立つ情報提供などサポートする
Heutagogy:学習者は自ら目標を定めて学習する/教育者は学習者のやる気を支援する・躓いた時のケアをする
 
この”学習者”を”部下””教育者”を”上司”に書き換えてみましょう。
 
Petagogy:部下は何を学んでいいかわからない/上司は手取り足取り指導する
Andragogy:部下は自分の疑問・課題を解決しようとする/上司は解決に役立つ情報提供などサポートする
Heutagogy:部下は自ら目標を定めて学習する/上司は部下のやる気を支援する・躓いた時のケアをする
 
Petagogy→Andragogy→Heutagogyと移るに従い、イケてる上司-部下関係になってきている気がしませんか?
こんな上司がいればいいのに……と思ったあなた。
大事なのは上司だけではありません。
 

成人学習理論のキモは”学習者のやる気”です。

どんなにいい上司がいても、学習者が自ら主体性を持って学びに向き合っていけるかどうか。
大事なのはあなた自身の主体性なんですよ!
「上司が悪いからオレは学べないんじゃー」というのは、Petagogyから脱却できていない証拠なわけです。
 
人のことばかり言わないで自分の経験も述べます。
今までの自分を振り返ると、会ったこともない「師匠」の影を探していました。自分に足りないものを教えてくれる「師匠」みたいなヒトがどこかにいるんじゃないか……。
この発想そのものがPetagogyだったわけです。
足りないものを手取り足取り教えてくれるヒトを探すのではなく、自分の足りないものを自分で見つめて自分で学びに行く姿勢へシフトしていかないといけない。
この概念に気づけただけで上司へのストレスが減りました。いい意味で上司への期待がなくなった分、期待に対する失望をしなくなったからだと思います。
 
ボスマネジメントを求めているヒトを、誤解を承知で2分します。
1つは上司がモンスターで振り回されるヒト。
もう1つは上司に過剰な期待を抱いているヒト。
後者の方の解決法として、”自らの学習スタイルを主体的にする” ”上司は親ではない”をお勧めいたします。
私達が上司になった時、もはや手取り足取り教えてくれるヒトはいないのですから。
(ちなみに前者の方には交渉術、チームビルディング、ファシリテーションが役立つと思います)
 
ボスマネジメントと聞くと”上司をいかにコントロールするか”と捉えがちです。
しかし、部下である自分自身にも正すべき姿勢があるのではないでしょうか?
成人学習理論を通して自らの姿勢を振り返ることができれば、明日から上司との関係も少し変わるかもしれません。