オンラインで研修できるようになった専門医機構の特任指導医研修会。田舎暮らしの身としてはありがたいばかりですので、早速受講しました。 2倍速、うまくいくと3倍速でもなんとか聞き取れるので、トータル2時間もかからないですね。 さて、家庭医療専門医で育った世代としては、専門医機構の作った総合診療専門医プログラムにうまく自分をフィットさせる必要があります。 今回の指導医講習会で強調されているパッケージがいくつかあり、その1つが経験省察研修録でした。 そのほかの教育パッケージについて3つまとめておこうと思います。
1、MIniCEX
文字だけ見るとううっとなりますが、日本語に訳すと「外来レビュー」です。
専攻医の外来を観察して指導医がフィードバックを返すというもの。
なんとなーく抵抗感がある指導医もいるかもしれませんが、外来を独り立ちさせる前にフォローを入れたり「ちょっと一緒に外来入ってみようか」みたいなノリならイメージしやすいかもしれません。
幸い、専門医機構で用紙も用意してくれています。「よっしゃMIniCEXやるぞ!!」と鼻息荒くして挑むのではなく、日頃の外来研修の中で時間を1コマ捻出し「今日は先生の外来をのぞかせてもらっちゃおうかな〜」くらいのノリで試すのがよいかなと思います。
外来での能力評価をするのがこのMiniCEXのキモなんですが、所感としてはビデオレビューではなくLIVEでやることに意義を見出してるのかなと思いました。ビデオレビューだとその場の患者さんにすぐフォローを入れられない、でもMiniCEXなら何か問題あっても指導医がフォローを入れられる。だからMiniCEXをやろうぜ、って感じなんでしょうかねー。
キモとしては、”提出義務があること”です。抵抗感があろうがなかろうが、やるしかないのですよ指導医の皆さん。
ともかくあまり構え過ぎずに繰り返しやってみること! これにつきそうです。
2、360度評価
専攻医の評価を指導医だけじゃなく、看護師・事務などさまざまなスタッフにやってもらおうという評価です。
ここの壁は看護師や事務など、評価に慣れていない人にいかに忖度せずに書いてもらうか、でしょうか。
360度評価の内容は貴重です。医師同士では見えていない面にも気づくことができます。一方で、その言葉が忖度に溢れたお湯のような内容では効果がないし、冷や水のような切れ味では傷付いて終わりです。有効なフィードバックになるように、360度評価をお願いする人たちにどんなものなのか・何を求めているのか説明は必要だと思います。
この360度評価も提出義務があります。ここを提出義務にしているのは個人的に好感が持てました。
3、Case Based Discussion
文字だけ見ると症例検討会というイメージですが、どちらかというと「指導医・専攻医のカルテレビュー」という内容みたいでした。びっくり。
あまり時間をかけずに短時間で指導・フィードバックすることについて言及されており、こちらもあまり構えずにやってみるのがよさそうです。どんなケースが望ましい、とか具体的な内容については何も言われていないので、日々の振り返りの中でCase Based Discussionをしてみようぜ!って感じなんでしょうね。
言わずもがな、こちらも記録を提出する義務があります。
4、所感
経験省察研修録は「自立した学習者を育てるためのパッケージ」であれば、今回書いた3つは「適切な指導を受けるためのパッケージ」という印象です。提出させることで専攻医の能力を測るだけではなく、研修プログラムとして最低限の指導はこのくらいやらないといかんのですよーという裏メッセージもありそうです。
実際の臨床能力をこの3つで育成・評価し、学習態度を経験省察研修録で培わせる。そんな狙いなのかなーと勝手に解釈しました。
指導医としては、
・とりあえずこういうのが必要だって理解しておく
・用紙を早々に印刷して手元に置いておく
・隙を見て専攻医とMiniCEX、Case Based Discussionに挑戦する
・繰り返しやってお互い慣れていく
・360度評価については突然依頼するのではなく、事前に説明を行っておく
あたりを実践するのがよさそうです。