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山形県で総合診療医を目指しています。日々の振り返りをご笑覧ください。

働いてみた”病院総合医”の雑観

この数ヶ月、臨床現場の忙しさに追われていろんなことがおざなりになっています。
これまでの診療所生活は本当にゆったりとしていたんだなーって肌で感じる毎日です。
そんなこんなで伸び伸びになっているブログですが、何とか月1回くらいは続けていきたい気持ちはあります!

 

今回は「病院総合医」について自分の感触を書き記しておこうという内容です。

そもそも病院総合医って何なの?って方はこちらをまずチェックしてみてください。
http://hgm-japan.com/general/
ここ数年で総合診療専門医が設立し、その上に積み重ねるキャリアとして家庭医療専門医に加えて病院総合診療専門医が入りました。
すごーくざっくりと分ければ「病院という場所で活躍する総合診療医」のことを指します。その対象として、家庭医療専門医は「診療所〜外来で活躍する総合診療医」という感じです。

つまり、昨年までの自分は家庭医療専門医のような仕事を主としており、今は病院総合診療医の仕事を主としているわけです。
じゃあどんな仕事をしていて、どんな目線で働いているのかを書き連ねてみようと思います。

 

①院内のギャップを埋める


当院は救急指定病院であり、周辺の開業医や施設から紹介を受けるような場所でもあります。
様々な紹介や搬送がある一方で、専門家の不在から対応できないケースも散見されていました。
専門家に紹介すべきケースであればそこまで迷うことはありません。だって搬送するしかないから。
悩んでしまうのが、「専門医に紹介しなくてもなんとかなりそうなんだけど対応する係がいない」時とか、「問題点がはっきりしてなくてどこに紹介したらいいかわからない」時です。
こんな状況下で有効なのが”とりあえず全科対応できて適切にトリアージができる人”になります。なんなら紹介しなくていいケースの時にその人が対応すれば、さらにギャップは埋まるわけです。

専門医が一通り揃っている病院ではこういうケースがギャップに陥って困ることは少ないと思います。
しかし、中小病院で専門医が揃っていないからこそ総合診療医が機能するんだな〜とは肌で感じた数ヶ月でした。

 

②病院から一次医療を支援する

これまで診療所に勤務していたからこそ、誰かを紹介するという時には「うわーもうこのケースは自分とこで粘ってたらまずいやつだ」と判断して紹介してきたんじゃないかと考えが巡ります。
一方、診察してみると思ったより入院しなくてもよさそうだったり、診療所で打たれていた対策が徐々に効いてきていたりする場合も見受けられます。

診療所・開業医の先生方が安心して外来で粘れるためには、バックベッドがきちんと機能してくれる信頼感が重要だと感じています。
だからこそ、紹介状が結果として的外れな場合であっても紹介相手を想ってきちんとお返事を作ることを意識しています。
あなたのメッセージはきちんと届きました・今後もこうやってしっかりキャッチするので頑張ってください、と思いを込めながら。
(相手にどうキャッチされているのかわかりませんが)

 

③ただの勤務医ではないマクロ目線を持つ

総合診療専門医の構造も含め、他の専門医と違うのが「小病院〜診療所での勤務体験」だと思うのです。
今、一緒に働いている専門医の先生方は大学や高度医療機関から移動してそのまま根付いている人が多い印象を受けます。
つまりほとんどの人が「診療所・開業医の現実」「施設の現実」を知らずに勤務している。
一方で、病院総合医をこれから名乗っていく人たちは一度はその現実に浸り、勤務した経験を持っています。

この「病院の外」での経験がどう生きるのか?といえば、マクロ目線を養うことではないでしょうか。
病院という文化の中で働きながら、それ以外の文化に触れること・共感することは非常に難しいと個人的には思います。
だって毎日忙しくて、他の文化を知ろうというエネルギーを絞り出すのも大変なんですよ。

だからこそこれまでの経験値が効いてきます。
病院目線の「地域に根ざした病院」ではなくて、住民から見た「地域に根ざした病院」の意味合いはどういうことなのか?
施設で看取りまで対応できないのはどうしてなのか、嘱託医とは何をしているのか。
訪問診療の現場で何が起きていて、どんなやりとりがされているのか。

そんな経験を踏まえた上で、病院をマクロ目線から考え直し、「本当にこの病院に必要な機能はなんなのか?」「総合医として自分は何を担うといいのか?」と煮詰められること。このスキルを専門医の取得過程から獲得できるようになっているのは地味にすごいことだと個人的に感じているところです。

 

つらつらーと書いてみましたが、今の所感としてはこんなところでしょうか。
今後ここに「総合医だからこその教育」だったり、「病院からの訪問診療」を積み重ねられるといいなーと感じています。
暑い日が続きますので、まずは自分が倒れないよう引き続き頑張ってまいりたいと思います。
以上!