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山形県で総合診療医を目指しています。日々の振り返りをご笑覧ください。

下血マネジメントにおける肛門鏡の威力

皆さん、肛門鏡使ってますか?

 

医者になって数年経ちますが、まだまだ「初めて」と遭遇します。
先日の初体験が肛門鏡でした。
見たことない方もいると思うので、画像をどうぞ。

https://images.app.goo.gl/3LNZHXtWuhxEzzcN8

なかなか攻撃力の高そうな診察器具です。しかし、これが意外と役に立つんですよ。

 

さて、外来に下血が主訴の患者さんがいらっしゃったとします。
まずは致命的な出血でないかバイタルサインのチェック・直腸診を含めた身体診察しますよね、
バイタルが安定しておりHbも下がっていない、CTでブリーディングや虚血もなさそう。けど直腸診では鮮血が付いてきちゃった。
ここからどうマネジメントされるでしょうか。

想定する疾患としては
 ・一応、大腸癌は鑑別しないといけない
 ・憩室出血が止まった?
 ・炎症性腸疾患も可能性はあるかな
 ・あとは……切れ痔??
こういう思考回路になると、経過観察しながら大腸カメラをお願いすることとなります。
もちろん大腸癌が見つかったりするので大腸カメラは必要です。
しかし、カメラを入れた瞬間にちょっと裂けてる肛門を見つけたり最後の最後で内痔核を見つけたりした時は、よかったねと思う反面「カメラまでやらなくてもよかったかな…」なんて思ったりするわけです。

 

ここで威力を発揮するのが肛門鏡です。
大腸カメラは下剤を飲んだり患者負担も大きかったり、色々と手間がかかります。
しかし、肛門鏡ではそんな手間は要りません! シムス位を取ってもらってお尻から挿れるだけ!
これだけで肛門周囲の疾患を詳細に診察できます。
挿入の仕方も全く難しくありませんし、個人的には「こんな簡単に肛門を詳細に診察できるなんて!」と眼から鱗の体験でした。

出血した本人は相当心配してやってきます。何せ下血は見た目が派手です。何か悪い病気なのかと心配で外来にやってくる人も少なくありません。そんな時に肛門鏡一回で「痔でしたよ」「ちょっと肛門が切れただけですよ」と言ってあげられるのは非常にコスパがいいと思いませんか?

 

大腸カメラは人によっては地獄の検査です。やらねばならない時はしょうがありませんが、肛門で原因疾患を見つけられればまたハードルの設定の仕方も変わってきます。
大腸カメラへのアクセスが悪い診療所や、大腸カメラへのハードルが高い方においては相当の威力を発揮できると思いました。
皆さんの手元には眠っている肛門鏡がありませんか? レッツトライ!!