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山形県で総合診療医を目指しています。日々の振り返りをご笑覧ください。

病体験 〜ヘルニア闘病記〜

あっっっっというまに5月が終わろうとしています。
なんでこんなにバタバタしてたのか記録しておこうと思います。

一言で言うと、脊柱管ヘルニアを発症し手術を受けておりました。
詳細をたらたらと書いてみようと思うので、興味ある方はお付き合いください。

〜〜〜
5年前からぎっくり腰を繰り返していた私ですが、2022年5月の腰痛はちょっと様相が異なっていました。
いつものぎっくり腰なら右腰部の痛みだけなんですが、今回は左足の痛み+左親指・足首の麻痺が出現しました。
「これはなんかいつもと違う? けど少し様子見てみようかな…」
ぎっくり腰を繰り返しすぎて経過観察でいいんじゃないかと思っていましたが、この事態をfbでつぶやいたところ大学の友人から「それヘルニアじゃない?」とアドバイスを頂きました。
その時には「いやいや、ヘルニアだとしても膀胱直腸障害がないから手術じゃないでしょ!内服だけ貰おうかな!」なんて甘い気持ちでした。
薬だけもらうつもりで整形の先生に声をかけたところ、「踵歩きしてみて」と一言。
試しにやってみると、全く立てない。踵立ちの保持すらできない。
その日のうちにMRI・CTなど一通り検査を組んで頂き、やはりL4/5椎間板ヘルニアがあることがわかりました。
「こんなにでかいのなかなか見ないですね〜」という褒め言葉まで頂いちゃいました!全然嬉しくない!
ヘルニアによる下垂足があるので手術適応があるのではないかと言われ、脊椎の手術に強い病院を受診することになったのでした。

〜〜〜
患者として受診するのは久しぶりでした。 
整形外科の診察では、やはり麻痺があるので2週間以内に手術するか決めましょうということになりました。

そして数日。案の定、痛みと痺れが引かない。
麻痺症状は少し良くなりましたが、やはり痛みが続くので手術を受けることになりました。

受けるのは経皮内視鏡下ヘルニア除去術。腰部から斜め方向に内視鏡を入れて、椎体を削ってヘルニアを露出させてそれを削る…という手術だそうです。
これが一泊二日で退院という凄い日程!
専門外の医学は知らないとはいえ、ここまで医療は進歩したのか〜すごいな〜と医者らしからぬ感想を抱いて帰りました。

予定手術となったので、それまでに勤務先の調整を諸々行いました。幸い、金曜入院・土曜退院なので1日だけ有給取ればなんとかなる(合併症がなければ!)工程でした。そこだけ外来をお願いし、申し送りを作り、手術に備えさせていただきました。
「育休に入る前ってこんな感じなのかな〜」なんて準備しつつ、いよいよ入院です。

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11時に入院を指示されましたので、間に合うように移動しました。こんな時間に患者として病院にいる、という現実がなんだか自分ごとじゃなくてちょっと足元おぼつかなかったです。
(麻痺が進んだと言うわけではない)

早速病棟に案内され、術着に着替えました。腰椎麻酔だからT字帯(ふんどしみたいなやつ)かなと思ってましたが、大腸カメラ用の使い捨てパンツが用意されてました。
お尻の部分に穴が空いていてスースーするなぁなんて思いましたが、人間の適応力とはすごいですね。30分くらい履いてたら、全然気にならなくなりました。

昼から手術に備えて絶飲食なので、着替えが終わったらすぐに点滴を取られました。
これがまさかの3回刺し……自分の血管は逃げてしまうらしく、看護師さんが苦戦されてました。自分の血管は太くて隆々としているので取りやすい血管と思ってたのでびっくり。
そういえば点滴なんてされたのは久々でした。中学生以来かも。
無事確保された点滴を見るだけで、自分は患者である・病を持った人間であると暗示されているような気分になりました(まぁその通りなんだけど)。

午後になって担当医より説明がありました。
万が一、合併症があったら1日入院が伸びたり1週間伸びたりするそうな。
確率としては低いものの、こういう低いパーセンテージを引き当てた経験(106人のうち3人だけ留年する試験で留年を決めた)のある身としてはすごく気になってしまいました。
頼むぜ、今度は多数派に入ってくれよ。

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いよいよ手術の時間となり、前処置が始まりました。抗菌薬に加えて、少しうとうとするお薬(アタラックスP)が点滴されます。このアタPがめちゃくちゃ効きました。しばらくしたら眠くて眠くて、意識朦朧・呂律が回らない状態での入室となりました。

手術はまず腰椎麻酔から。腰椎麻酔よりもその前にされた局所麻酔の方が痛かったです。ということは、局所麻酔ってやっぱり効果あるんですね。前に腕の手術を受けた時にも思いましたが、局所麻酔をきちんと打ってもらうと本当に痛みを感じません。おかげで腰椎麻酔も特に痛みを感じず、腰から足が少し重たくなる程度で終わりました。

そこから眠たい体を何とか動かして手術体位を取りました。うつ伏せ+膝立のような状態(膝たてプランク?)をイメージしていただければ間違いないと思います。下にクッションがしっかり敷かれているとはいえ、腕や太ももが痺れる! しかし、もぞもぞするのも悪いしなぁと遠慮しながらちょっとずつ動かして痺れと格闘しておりました。

左腰から針を刺され、そこの穴を広げて内視鏡を入れたらしいんですが、麻酔でさっぱりわかりませんでした。痛みなく進んで素晴らしいです。唯一感じたのは骨を削る振動でした。
腰椎の斜め後方から侵入して骨を削り、できた穴からヘルニアを引き摺り出すというのが今回の手術なので、その振動だったようです。

局所麻酔ということは意識があるということで、ありがたいことに内視鏡の画面を見えるようにしてくれました。先生と手術室の看護師さんに配慮いただき感謝ですね。
骨を削っている間はぶっちゃけ見えてる画像があまり変わりなかったため、すみませんすごく眠くなりました。医学生の頃も見学中に眠たくなってぼーっとしてたっけなぁ。

しばらく骨削りの時間が続き、ようやく神経が見えるようになってヘルニアとご対面です。椎間板を経由して青色に染色されていたらしく、ヘルニアも青い色素に染まって鎮座されておりました。
内視鏡で拡大されているとはいえ……でかい。
この大きなヘルニアが小さい鉗子で引き摺り出される様子は、なんとなく毛穴から脂を引き抜いているように見えました。こう、ニュルンと出てくるとスッキリするやつ。
何回かに分けてヘルニアを引き出されていると、突然尻に電撃痛が走りました。痛みがあったら言ってくださいねーと言われていたので、今こそ報告の時!
「今、左臀部に電撃痛が走りました!」
我ながら固い報告だなーとちょっと恥ずかしくなりました。
どうやらヘルニアが近くの神経を引っ張って神経知覚に触ってしまったようでした。それ以降何ともなかったのですが、麻酔が効いている状況でも痛いというのにはびっくりしました。

4-5回ほど鉗子で引っ張っては千切りを繰り返し、概ね除去が完了しました。閉創はあっという間で気づいたら手術終了となっていた感じです。
その後帰室したところで、緊張の糸が切れてどっと眠くなりそのまま朝までぐっすり眠ってしまいました。

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翌日、目が覚めてからちくちくした腰の痛みと痺れの少なさに気がつきました。なによりも下腿〜親指を覆っていた痺れがほとんどない! 4-5/10程度が、1/10くらいまで改善した感じです。目に見えて良くなった点があるというのは手術頑張ってよかったなぁと思いました。
午前のうちにリハビリ指導を受け、10時には退院。見事、1泊2日で退院となりました。

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今回のヘルニアで思ったのが大腿〜臀部あたりの筋肉が固いことをなんとかしたいなーということです。
ヘルニアそのものはしょうがないし、椎間板が歳をとっていること自体ももはやどうにもできないことです。
そんな身体をあと30-40年使っていくためには、その周辺の筋肉を整えてなんとか維持していくしかない。
となると、筋肉を柔らかくしながら骨以外の支えをしっかり作れるようにする必要があるなーと思ったわけです。

腰痛のたびに、自分が病を抱えた人間であり、一つずつ老いの階段を進んでいることを体感します。心でやりたいことがあっても、自分の体には限界があってゆっくりとゴールに向かって進んでいる。
やりたいことを叶えるためにも、自分のできる範囲で身体を整えながらQOLを崩さないように生きていきたいなぁと思いました。

長々とお付き合いいただきありがとうございました。
健康は気づいた時が見直し時期、皆さんも自分のボディを大事にしてくださいね!