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山形県で総合診療医を目指しています。日々の振り返りをご笑覧ください。

読書録:死とは何か イェール大学で23年連続の人気講義

Kindleで無料の本にあったので試しに読んでみたら、めちゃめちゃ考えさせられたので記事にまとめておこうと思います。

この本は哲学の先生が「死とは何か」というテーマで行っている講義の内容をまとめています。
・死はなぜ悪いのか
・不死が可能なら、あなたは手に入れたいか?
・死に直面しながら生きる
・自殺
などなど。様々なテーマについて、哲学者ならではの思考の切り口で考えていきます。
できるだけわかりやすい語り口で書いてくれていますが、一気に読むのではなくじっくり読み進めていくことをお勧めしたいです。自分は途中で迷子になりました。

さて、臨床医として生きていくにあたり、避けては通れないのが「死」です。
誰一人として患者さんを死なせたことのない医師が主人公の漫画もありましたが、残念ながらレアケースでしょう。
医師が国家資格なのは、人間を法的に傷つけられる資格だからです。死ぬことを宣言するのも医師にしかできない行為ですよね。
じゃあ、医師とは「死とは何か」一番わかっている仕事なんでしょうか?

これに対して僕はNOと答えたいです。
生理学・医学としての「死」については知っていることがたくさんあります。
しかし、概念として・哲学的な意味で「死」について語れることとイコールではありません。
「死生観」と置き換えた方がいいのかもしれませんね。
大学の授業で触れる機会があるわけでもなく、もしかすると死生観について考えずに終わる医師もいるでしょう。
これに対して是非を語るつもりはありませんが、少なくとも僕は「嫌だな」と感じました。
 僕の死亡宣告の前に、目の前の患者さんはどれだけ悩んだんだろう。
 家族は何を感じているのだろう。
職務を果たすのなら、そんな思いへ寄り添いながら頑張っていきたい。そんなことを思いながらも、ゆっくり考える時間を取れずにいました。

この本が教えてくれたのは「死とは何か」という問いへの答えではありません。
読書を通して「自分にとっての死とはなんだろう?」と改めて考える機会を与えてくれました。
「死」に関わる仕事をしているからこそ、時間をとって考え直すのは大事なことだと思います。
興味を持たれた方は是非ご一読を。