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山形県で総合診療医を目指しています。日々の振り返りをご笑覧ください。

論文:揚げ物食べるとヤバいってホント?

すっかり雪深くなりました。
今年の目標として、論文を月1回くらいは頑張って読んでみよう!を掲げております。

掲げたままにして早1か月。これはいかんですよ。
ということで、ちょっと興味深かった論文を頑張って読んでみました。

Association of fried food consumption with all cause, cardiovascular, and cancer mortality: prospective cohort study

BMJ 2019; 364

「揚げ物の消費量と心血管疾患・ガンによる死亡率との関係」といったところでしょうか。

アブストラクトの内容はこんな感じです。
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目的:アメリカの女性における揚げ物総消費量・種類ごとの消費量と総死亡率・それぞれの疾患による死亡率の関係を調査した。

患者:1993年9月〜2017年2月の間の106966人の閉経後女性(50-79歳)
メインアウトカム:全死亡率、心血管疾患による死亡率、がんによる死亡率

結果:1914691人年の間に31558人が死亡した。揚げ物の総消費量という点では、全く消費しないのと最低週1食の揚げ物摂取を比較した時、全死亡率のハザード比は1.13・心血管疾患による死亡率のハザード比は1.12。魚や貝のフライにおいて、総死亡率のハザード比は1.07、心血管疾患による死亡率は1.13。総消費量と種類ごとの消費量はガン死亡率と相関はしなかった。

結論:揚げ物を頻回に食べる、特にフライドチキン・魚や貝のフライは死亡率を上昇させ、心血管疾患による死亡率を上昇させた。
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最近、「揚げ物は揚げる過程でカロリーが吹き飛ぶのでカロリーゼロ!」という文化もあるようですが、真っ向から否定した内容となっています。
揚げ物を熱く語るという内容が個人的にツボだったので、もう少し詳しく読んでみることにしました。

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P 閉経後のアメリカ人女性
E 揚げ物を週1回以上摂取すると
C 食べない群と比較して
O 総死亡率・心血管疾患による死亡率・癌による死亡率が変わるか

考察で面白かったこと
アメリカでは同様の結果が報告されているが、スペインでは関係しないという論文が出ている
・使う油が違う(アメリカはコーン油・スペインはオリーブオイル)ことや、揚げ方(スペインの家庭料理では揚げ焼きにする)の違いが影響しているんじゃないだろうか?
・オリーブオイルの摂取量と全死亡率・心血管疾患による死亡率の低下も報告されている。
・発がん物質はたぶん摂取量が足りなかったから

この研究の強み
・サンプル数が多い
・前向き研究である
・長期間フォローアップしている

研究のリミテーション
・交絡因子は残っていること
・揚げ物の詳細(油の種類とか温度、方法とか)がわからないこと(外食だとますますわからない)
・質問票でそれぞれの揚げ物が詳しく分けられてなかった。

ちなみに質問票では…
フライドチキン
魚のフライ・甲殻類のフライ
そのほかのフライ
(フライドポテト・フレンチフライ・フライドライス・フライドキャッサバ・フリッター
ポテトチップス・コーンチップス・トルティーヤ・ポークスキン・リッツ・チーズクラッカー
フライドプランテン
タコス・トルティー
フルート
アゲパン)
…の8項目で調査したようです。
 ポテトのあたりが凄い。見たことのない揚げ物も多い。

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 この論文をみて、「じゃあ日本でも揚げ物は摂取しないようにしよう!」とは言いにくい内容でした。もちろん過剰摂取はよくないと思います(なので、私は揚げ物=カロリーゼロ理論には残念ながら賛成できません…大変申し訳ない…)。
 論文の中にもある一言ですが、「場所や食文化で揚げ物も変化する」というのは正にその通りだと思います。
 食生活は文化の一部、炭水化物といっても文化ごとに種類も食べ方も様々です。
 本当に寿命を延ばす食生活とはまだまだ未知の存在なのかもしれませんね。