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山形県で総合診療医を目指しています。日々の振り返りをご笑覧ください。

読書会「泣くな研修医」

今月もYooc!!で読書会を行いました。
今回の課題は「泣くな研修医/中山祐次郎」です。

Amazonの紹介はこんな感じ。

 

”傷ついた体、救えない命――。
なんでこんなに無力なんだ、俺。

雨野隆治は、地元・鹿児島の大学医学部を卒業して上京したばかりの25歳。
都内総合病院の外科で研修中の新米医師だ。
新米医師の毎日は、何もできず何もわからず、先輩医師や上司からただ怒られるばかり。
だが患者さんは、待ったなしで押し寄せる。
生活保護認知症の老人、同い年で末期がんの青年、そして交通事故で瀕死の重傷を負った5歳の少年……。
「医者は、患者さんに1日でも長く生きてもらうことが仕事じゃないのか?」
「なんで俺じゃなく、彼が苦しまなきゃいけないんだ?」
新米医師の葛藤と成長を圧倒的リアリティで描く感動の医療ドラマ”

医者になってしまった自分が読んだ感想と医学生の感想にどれだけギャップが生まれるのか、実はドキドキしていました。


当日のログをちょっとだけご紹介します。


「救急外来のシーンを見て、自分ができるのかと心配になった。
 末期癌の方に何ができるのか悩むシーンに共感した。
 理想だけでは語れない、決められないのが当たり前なのかなと思った。
 若くして末期癌で亡くなる方のところは、自分なら泣いちゃいそうだと思った。
 自分の感情をどうコントロールするのかコントロールしないといけないな」

「自分だったら助ける方向に行くかな、と思う。
 医師の年数で考え方が変わっていくのかなと感じている。
 自分が入っていく世界の嫌な部分は見たくないと考えてきた。
 タイトルから研修医が大変そうだから読もうとは思ってなかった。読み終わった時に、落胆とか悲嘆とかじゃなくモチベーションにつながった。暗い未来があってもその世界があると先に知っておくことが大事だと感じた。
 看取りの時に泣かない精神力はいつ身につくのかな。
 指導医が実は優しかった、という話を聞いて、医者もやっぱり人間で葛藤の中に生きていて一面では決めつけられないと思った」
 
生活保護の方のの末期癌のところはやっぱり思うところがある。
 親はドラマを見ていて「読まない方がいいよ」と言われて、気になっていた。
 実習の時にも指導医が患者さんの悪口を言っているのも見たので、医療の裏側に近い内容かなと思う。
 研修医の時って肩身が狭くなるだろうし、なんのためにいるのかなと思うこともある。
 生保の患者さんに「それでいいのかな」と感じた研修医は、医者と一般人の感覚の両方を持っている感じがしていいなと思った。患者さんに近いところでそれでいいのかなと思える姿勢は大切なんじゃないかと思った」


「自分の感想と同じだったりちょっとずつ違っていたりして、正解がないところに飛び込むんだなと感じた」
「本を読んで自分の感情をアウトプットするのは、思考を整理する意味で大事だなと思った。読んだ直後は興奮していたけど、今冷静になって残っているものこそ大事なことにつながる。ここで残ったものって医者になったときに大事にしたいものだと思った」
「同じポイントに気になっていたのが面白いと思った。医学部として考えるところが近い? 同時に、患者さんの前で泣くのは?という問いにもそれぞれ違うところがあって、同じ医師でも違うところがあるんだなと思った」

自分の未来に近い話を読むことで、より自分の未来をイメージすることができる。そこから理想の医師像とか医師としてのプロフェッショナリズムを考えることができる。
こういった点でも医学教育的にも面白い本だなというのが自分の感想です。

もちろん小説としても面白いことは保証します!ドラマは見ていないのでわかりませんが、未読の方はぜひ読んでみてくださいね。

後日談として、twitterで読書会を紹介したところまさかの作者である中山先生からコメントをいただくことができました。ネットの世界は広くて狭い。