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山形県で総合診療医を目指しています。日々の振り返りをご笑覧ください。

健診で肝機能障害を見たら

健診の結果確認は外来で大事なポイントです。
年1回その人の状態を見直すきっかけにしたり、いつもなら聞きにくい背景の情報収拾のきっかけにします。
 
健診で肝機能障害を見たとき、皆さんは何を考えますか?
僕は肝機能というのがたいそう苦手で、昨日もスクリーニングで何の検査をしたらいいか迷ってしまいました。
復習も含めてまとめておこうと思います。
 
(AST・ALTの上昇を見たら)
Step1 初期評価
 薬剤性(サプリメント・市販薬も)を確認する
 アルコール中毒を疑う(既往歴、CAGE、AST/ALT比>2:1)
 HBVHCVの採血を行う(HBs抗原・HCV抗体をオーダー)
  A型肝炎・E型肝炎を想定するなら、まず話を聞く(牡蠣など海産物の生食、猪・鹿・豚の生食、渡航歴)
 ヘモクロマトーシスをスクリーニング(日本ではほとんどいない)
 脂肪肝の評価(食事習慣、AST/ALT比<1、エコー検査を追加)
Step2 2次評価
 女性や自己免疫疾患の既往がある時、自己免疫性肝炎を考慮する(タンパクの電気泳動、抗核抗体ANA、抗平滑筋抗体ASMA)
 甲状腺の評価を行う(TSH、T3、T4)
 セリアック病を想定する(もし患者に下痢や原因不明の鉄不足がある時/日本はまれ)
Step3 アンコモンな原因を評価
 ウィルソン病を想定(40歳未満のときにはセルロプラスミンとkayser-Fleischer ringsを確認)
 α-1アンチトリプシン欠損症を想定(年齢や喫煙歴の割に気腫がある場合)
 副腎異常を想定(コルチゾール・ACTHの評価)
 筋疾患を否定する(クレアチニンキナーゼ、アルドラーぜ)
Step4 肝生検か経過観察
 AST/ALTが2倍にならないか経過観察
 もしくは肝生検を検討する
 
(ALP上昇を見たら)
まず生理学的な上昇(妊娠、食後の上昇)を確認する
上昇の原因を特定=rGTPをチェック
 正常→骨由来のALPなので骨疾患を確認
 上昇→肝由来のALP
右上腹部の腹部エコーを行う
 胆管拡張あり→MRCP・ERCP
 胆管拡張なし→抗ミトコンドリア抗体(AMA)をチェック
AMA(+)+エコー正常/AMA(ー)+肝実質の異常→肝生検
AMA(-)+エコー正常→50%以上の上昇ならMRCP/ERCP/肝生検、50%以下なら経過観察
 
日本ではあまり見られない疾患も入っていますが、基本のスクリーニングはプライマリケアのセッティングでも十分可能であることが確認できました。
 
参考:UpToDate、今日の臨床サポート