緩和ケア科の抄読会で論文を漁っていたところ、Journal of palliative care medicineにメンタリングについての記事がありました。
一切緩和の内容がないという尖った記事に心を惹かれ読んでみると、なるほど納得の内容でした。
簡単に記事を紹介します。
Understanding and Finding Mentorship: A Review for Junior Faculty
Elise C. Carey, M.D.corresponding author and David E. Weissman, M.D.
J Palliat Med. 2010 Nov; 13(11): 1373–1379. PMID: 21091022
(アブストラクト)
背景:メンターシップは医師として成長するのに重要と考えられているが、実際にメンターがいると回答する医師はわずかである。医師の仕事の責任が増えてきているため、メンターをみつけてもメンタリングの関係を維持するのが困難である。また、緩和医療はメンターとなるべき世代が不足している分野であり、供給に対する受容がますます不十分になる可能性がある。
考察:この論文では”理想的な”メンターの態度とメンティーのキャリア形成のなかで果たす役割について説明する。次に、メンタリング関係を促進するためのフレームワークを説明する。最後に、メンタリング関係の変化・メンティーからメンターへの移行について説明する。
メンターとは?
初心者を指導し、教え、発達させる上級者/経験者のこと
(指導を受ける側はメンティー/プロメジェ)
理想的なメンターの役割
①教師として(専門能力・リーダーシップ・管理・学術的な成長を支援する)
②スポンサーとして(メンティーを保護し全国ネットワークへ橋渡しする)
③アドバイザーとして(メンティーが目指そうとするキャリアを支援する)
④エージェントとして(メンティーが障害を克服するのを支援し、過度の欲求から保護する)
⑤お手本として(メンティーに見習うべき姿勢を示す)
⑥アカデミックな教師として(学術的な支援+メンティーが進むのをサポート)
⑦親友として(共感的な聞き手として洞察・心理的サポートを提供する)
メンタリングの新しい形
・ピアメンタリング
同じキャリアの人と相互関係の中でメンタリングをし合う。
欠点として、経験者の意見がないことが落とし穴になりうる。
・グループピアメンタリング
同じキャリアの人4−6人に、経験のあるファシリテーターが加わる。
ピアメンタリングの欠点をカバーできる
・モザイクメンタリング
複数のメンターに師事する。最近のキャリアの多様性からはこちらのほうがいいのではないかとも意見あり。一方で大本の責任を取る人がいないことによる見落としは発生しうる。
メンターを見つけるためには
(前提)メンターが自然発生することは難しいので、メンティーが積極的に関係性を築く必要がある。
- 自分の目標・強み・弱みを見つめた上で、最も指導が必要な分野を考える
- 習得したい知識・スキルを持っている人、メンターになってくれそうな人をリストアップする
- 相談する
メンタリングの注意
・メンターに都合のいい関係(利己的な関係)
→メンティーはメンターのクローンではなく、メンターは親でも救世主でもない
全てのアドバイスに従う必要はなく、関係性が構築できなければ終了することもある
・メンターとメンティーの間に発生する競争、関係性の誤解
→相互にフィードバックしながら互いにオープンなコミュニケーションを心がける。
みんなもメンターを目指そう
メンターのメリットとしては、相互関係の中で自身の成長につながること・自身の知識やスキルを誰かに引き継げること。引き継いだメンティーがそれを発展させるのを見届けるのは相互にメリットのあることと考える。
自己評価ツールも乗ってました。これを明らかにした上でメンターを探そうぜ、ってことみたいです。
1,意思決定のための枠組みを作る
a) 私のミッションは何だろう? 私の叶えたいことは?
b) 私なりの「成功」を定義すると?
2,短期間・長期間のゴールを設定する
a) 短期間のゴール(1−5年) b) 長期間のゴール(5−10年)
3, 私個人のゴールはどこか? 個人的な目標と職業的な目標はどう結びつくか?
4, 強みと弱みの評価
a) 私の強みは何か? うまくできること・やる気がでること
b) 私の弱みは何か? 退屈なこと・やるのが難しいこと
5, メンタリングが必要なことは何か? 目標・強み・弱みを参考に
6, もっと仕事が効果的になるために役立つことは?
7, 仕事をより困難にさせるものは?
8, 同僚で大事にしたい価値はなんですか?
自分はモザイクメンタリングを自然にしていたんだなぁと腑に落ちました。
結構、総合診療の世界ではあるあるではないかな。