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山形県で総合診療医を目指しています。日々の振り返りをご笑覧ください。

キャリアについて考えてみた

「入局しないなんて、あなたキャリアはどうするの?」
研修医2年目の時に参加した学会で、同じグループになった神経内科医からあきれたように言われたことを今でも覚えています。
あれから6年経ち、相変わらず入局と縁のない世界で自分のキャリアは積み上がってる…なんて言ったら、その先生はどんな顔をするでしょうか。

さて、珍しくスパイシーな切り出しで始めてみました。今日はキャリアについて色々書き連ねていきたいと思います。
自分の偏見も相当入ってますので、ほどほどに読んで頂けますと幸いです。

 

(1)「キャリア」の定義
改めてキャリアとは何か考えてみましょう。
キャリア理論は数多くあり、定義も世界共通で定まっているものはありません。
話を進ませるために、ここでは「人生を仕事という面で切り取った際の意味づけやパターン」としておきましょう。
これならどんな人にでも働いていればキャリアを語ることができますね。アルバイトを積み重ねたことだってキャリアだし、専門医をとって博士号を取ることもキャリアです。

一方、キャリアという言葉がぶれやすいのは異なる意味合いを含んでいるからだそうです。(ここら辺は参考文献を確認してほしいです)

①キャリア=より偉くなること
 確かにキャリアを積み重ねることで出世する人もいるでしょう。 
 「キャリアにアップもダウンもない」という名言の通り、偉くなることだけがキャリアではありません。別部署で1から勉強し直すことも、新天地で新しい仕事を始めることも、その人にとっては大事なキャリアです。

②キャリア=専門を極めること
 医者で語られるキャリアはここのことが多い気がします。冒頭に述べた解釈ですね。
 これが正解なら、専門職以外にはキャリアが発生しないことになります。サラリーマンにはサラリーマンのキャリアがあり、農家には農家のキャリアがあります。
 冒頭の神経内科医にとってのキャリアとは、おそらくこのような意味と推測されます。
 この解釈が医者の間では一般的なので、医局からの離脱+臓器別専門医ではない生き方=ドロップアウトと言われちゃうわけです。

この2つに勘違いが起きやすいことを押さえた上で、人生の中で就いた仕事の中に意味づけやパターンを考えることがキャリアという言葉の意味になります。

 

(2)デザインとドラフト
キャリアについて考える際のポイントとなるのが、デザインとドラフトです。
デザインは設計・ドラフトは漂流、というイメージでいいと思います。

 自分の人生ですし、キャリアは自分の好きなように作り上げたいですよね。
 医師3年目から有名病院で後期研修、6年目で専門医を取得してバリバリ臨床をやり、10年目あたりで開業し地域医療を展開、30年目で訪問介護ステーションや包括事務所を含めた経営体制を…!と夢想することはもちろん大事です。
 こういった、自分の未来を仕事の面からどうありたいか考え設計することを「デザイン」と言います。

 しかし、人生はそう上手くいくばかりではありません。どんなに足掻いても設計しきれない要因は至る所に転がっています。
 自分が病気をしてしまった・妊娠や子育て、新型コロナウイルス流行でキャリアについて再考せざるを得なかった人もいたでしょう。
 いくらデザインしても100%その通りに進むことはありません。抗いようのない流れに漂う時期が必ずあります。
 このような流れに漂うことを「ドラフト」と言います。

 人生を進む中で、デザインする時期とドラフトする時期が交互に現れます。それを踏まえた上で、それぞれの時期に何が求められるのでしょう?

 

(3) セレンディピティを掴む
 デザインが求められる時期はある程度予測できる時もあります。卒業手前、初期研修が終わる時、奨学金の返済が終わる時などなど。こういう見えている転機には事前に準備をしておくことが大事です。
 しかし、世の中はそう甘くはない! ドラフトの時期に突然転機が舞い降りてくる経験を皆さんもしたことがあるのではないでしょうか。思わぬところからのスカウト、ふとした呟きから始まった企画、舞い降りた原稿の依頼、どれも予想外ながら自分の人生を変えうるチャンスかもしれません。
 いくらデザインしてもその通りにいかない時があることを述べましたが、これは決してマイナスな意味だけではありません。予想外に自分のキャリアが面白い方向へジャンプする奇貨かもしれないのです。
 こういう素敵な偶然・予想外な幸運を「セレンディピティ」と呼ぶそうです。キャリアが大きく変わるチャンスかもしれない幸運、せっかくなら掴み取りたいですよね。
 だからこそ、私達はドラフトの時期にこそ積極性を持って動くことが求められます。
 ただ流されるのではなく、いつセレンディピティが舞い降りてもいいように準備をしておくこと。何よりもセレンディピティが舞い降りてくるために、積極的に活動すること。チャンスを掴む準備とチャンスに出会うための準備、どちらも求められるのは「積極性」だと考えます。

 

・まとめ
 キャリアは偉くなること・専門性を高めること、という意味ではない。人生を仕事という面で捉えた時の意味づけやパターン
 ドラフトの時期にも説教的な行動を続けることで、セレンディピティを掴みキャリアをデザインしていく。
 これが自分の考えるキャリアです。

 新型コロナウイルスのせいでどうしてもうまくデザインできない人もいるかもしれません。
 できることを模索していると、あなたにもセレンディピティが舞い降りてくるかも?
 そのためにも、叶えたい夢を描きながら積極的に活動してみましょう!

 

(参考文献)
働くひとのためのキャリアデザイン:PHP新書