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山形県で総合診療医を目指しています。日々の振り返りをご笑覧ください。

総合診療の海外論文を読もう

論文を読まねばならぬ。

医者になって何度そう思ったことでしょう。その度ごとに挑戦しては飽きてやめるを繰り返してきましたが、またその波がやってきました。
やはり定期的に触れていないと能力は劣化します。それはどんな能力でも一緒で、英語を読む・論文を読む・まとめて誰かに伝えるというのは繰り返し触れておかないと劣化する能力な訳です。

 

ということで、総合診療関係のみんな! 論文を一緒に読もう!
「でも何を読んでいいかわかんないっす」というそこのあなたのためのエントリーです。(最後の方にPubmedの検索式も置いてあるので使ってください)

 

論文を読む目的としては、
・英語を読む能力、論文を読む能力を錆びつかせないため
・現在の主流雑誌を読むことで、どんなトピックが熱いのかを知る
・自分をガラパゴス化させない
あたりですかね。

そういう意味でも、総合診療の主流雑誌を定期的に読んでおくことは自身のアップデートに役立つはず!多分!

 

じゃあ、総合診療の主流雑誌とは何か? 総合診療というワードをどう解釈するかという論点もつきまといますが、ここでは「総合診療=プライマリケア」とみなしましょう。総合内科とか病院総合診療とかはまた雑誌があるのかもしれないけど、ここでは割愛。

どんな雑誌があるか調べていたらこんな国内論文がヒットしました。

「プライマリ・ケア主要国際学術誌における日本の論文数シェア」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/generalist/40/3/40_126/_pdf/-char/ja

ここに載っている雑誌は確かに一度は見たり聞いたりした事があるものだらけです。雑誌の部分だけ抜粋します。

 

Annals of Family Medicine(AFM) 米国 2003 5.087
Journal of General Internal Medicine(JGIM) 米国 1986 3.494
British Journal of General Practice(BJGP) 英国 1990 2.741
Family Practice(FP) 英国 1984 2.022
The Journal of the American Board of Family Medicine(JABFM) 米国 1988 1.989

 

個人的に作った検索式を置いておきます!

((Ann Fam Med[jo]) OR (J Gen Intern Med[jo]) OR (Br J Gen Pract[jo]) OR (Fam Pract[jo]) OR (J Am Board Fam Med[jo]) ) AND hasabstract

これをPubmedの検索窓にコピペすることで雑誌のタイトルをざざっと見る事が可能です。
Pubmedの表示形式をMost Recentにしておくと、最新順に閲覧できます)


Pubmedを開く習慣がないんですよねー」というそこのあなた。
ここは根性です。GRIDです。リマインダーでもなんでもいいから、週1回でも日1回でもいいので定期的に開くようにしましょう。

いつかやらなきゃ、と重い腰をあげるときはきっと今。ちょっとずつ勉強し続けていきたいと思います。

総合診療関係の施設基準を整理する

今後指導医として総合診療領域に関わっていきたいと思っている中で、外的キャリア=資格に関して整理しておく必要があります。
仮に専攻医を育てるとなったら、何の専攻医を招くのか?どんな資格を取らせるといいのか?そのためには施設基準を満たさないといけないので、まずはそこから整理していきます。
(あくまで個人用のまとめなので、細いところはご自身で調査お願いします)

 

 

===

(1)資格の整理

ひとまず認知度の高そうなところをピックアップしてみると、
(いわゆる総合診療)
①日本専門医機構 総合診療専門医
②日本プライマリケア連合学会 新家庭医療専門医・プライマリケア認定医
③日本病院総合診療医学会 病院総合診療医
④日本地域医療学会 地域総合診療医
〜〜〜
(総合診療と親和性が高い)
⑤日本緩和医療学会 緩和医療専門医・緩和ケア認定医
⑥日本在宅医療連合学会 在宅医療専門医

……あたりでしょうか。
基礎領域として別運営になるリハ医・総合内科医・老年内科医・救急専門医などは一旦外します。日本病院会の運営する病院総合医というのもあるけど、ちょっとこれは様子見。
上記6制度について、研修内容をさらっとチェックしてみます。

 

①日本専門医機構 総合診療専門医

ホームページはこちらhttps://jbgm.org/
総合診療の基礎領域として運営が始まり、今年度で2期生が誕生予定ですね。
3年間の専門プログラムの構成は下記のようになっています。

総診Ⅰ 6ヶ月以上:診療所〜中小病院
 ・学童期以下の小児、後期高齢者を含めた外来診療(※小児に関しては週1研修などで代替可)
 ・訪問診療 
 ・地域包括ケア
総診Ⅱ 6ヶ月以上:病床のある病院総合診療
 ・救急医療を提供
 ・臓器別でない病棟/外来診療
(総診Ⅰ+Ⅱで18ヶ月以上)
内科 12ヶ月
小児科 3ヶ月:常勤で小児科を指導可能な医師がいる病院で外来・救急・病棟研修が行える施設
救急 3ヶ月:救命救急センターもしくは救急科専門医指定施設、もしくは救急科専門医等が救急担当として専従する一定の規模の医療機関(救急による搬送等の件数1000 件以上/年)

問題は小児科・救急。山形県内で救急の条件を満たせそうなのが各地方1箇所ずつしかなさそう。小児科が常勤で入院とれる施設も少ないのが山形の現状です。
いずれにしても自前の施設だけで研修できる内容にはなっておらず、プログラム設立のためには複数の医療機関との連携が重要になってきそうです。

 

②日本プライマリケア連合学会 新家庭医療専門医・プライマリケア認定医

プライマリケア認定医は7年以上の臨床経験と試験だけで受験資格を満たせるので、一旦脇に置いておきます。
新家庭医療専門医に関するHPはこちら https://www.shin-kateiiryo.primary-care.or.jp/
プログラム期間は24ヶ月となっていますが、最短1年にもできるとのこと。
(機関病院が①②両方の認定を受けていれば、オーバーラップさせる)

研修Ⅰ 18ヶ月:診療所・小病院
 ・学童期以下が 5%以上(予防接種も含む)、後期高齢者が 10%以上であること。
 ・18ヶ月のうち連続して12ヶ月勤務が必要
 ・在宅患者への計画的な訪問診療ができる体制をとっていること
研修Ⅱ 6ヶ月:病院
 ・病棟/外来で救急・緩和を含めた臓器によらない診療を行う

①に診療所・小病院を1年上乗せするイメージ。PG自体のハードルはそこまでではなく、むしろポートフォリオ支援の方がハードルになるのかもしれないですね。
田舎の診療所なら研修1は間違いなくクリアできそうなんだけど、そこに指導医がいるかどうかという問題が出てくるのかも。

 

③日本病院総合診療医学会 病院総合診療医

ホームページはこちら http://hgm-japan.com/program/
期間は1−3年と幅があり、下記条件を含めることとされています。
機関病院が①③両方を認定している場合、オーバーラップすることで研修期間を短くできるからとのこと。

急性期病院 12ヶ月以上
地域包括ケアを意識した研修 2ヶ月以上(可能なら6ヶ月以上)
中医療 2ヶ月(努力義務)
外来研修 半日/週で初診・ER外来 3ヶ月+再診外来 6ヶ月

ICUが努力義務となっているところが、ある程度幅を持たせてくれていますね。
ICUを持っている病院は山形県内に複数ありますが、専従医のいるところはほんと一握り。もし外部研修として入れるとすれば、これまた場所が限られそうです。
きちんと見てみると、決して大学病院でしか研修できないわけではなく地方の中小病院でもなんとかできるようになっている印象を受けました。

 

④日本地域医療学会 地域総合診療医

突如として現れた第3の総合診療医。
ホームページはhttps://www.jach.or.jp/article/

診療所ベースに外来ケアを重視する新家庭医療専門医。
病院ベースに急性期ケアから包括ケア・臓器横断的ケアを重視する病院総合診療医。
さて、地域総合診療医は何をクローズアップするのか、今後の発表が待たれます。

〜〜〜
(総合診療と親和性が高い)


⑤日本緩和医療学会 緩和医療専門医・緩和ケア認定医

個人的に総合診療と親和性が高いと思っている領域の1つ。
ホームページはこちら https://www.jspm.ne.jp/nintei/kenshu_shinsei.html
がっちりと研修PGが定まっているわけではなさそうですが、専門医申請のための条件からいくつか見出すことができます。

緩和医療専門医
・研修期間は2年間
・基幹医療機関がん診療連携拠点病院・「緩和ケア病棟入院料」届出受理施設・「緩和ケア診療加算」届出受理施設・緩和ケアを実践している施設のどれかを満たしている
・指導医がいる

緩和ケア認定医
・PG制ではないが、6ヶ月以上の緩和ケア勤務歴+症例報告が必要

どちらかというと、PGの整備よりも医療機関として緩和ケアにどれだけ取り組んでいるか?というところがポイントになりそうです。

 

⑥日本在宅医療連合学会 在宅医療専門医

在宅も親和性が高いですよね。ホームページはhttps://www.jahcm.org/system.html
プログラムとしての情報は下記のようです。

・プログラムは1年以上。
・半日を1単位として、週4単位の在宅診療
・半年間の内科研修(初期研修や10年以上の医師経験で代用可)
・3ヶ月の緩和ケア研修(10例以上在宅看取りがある基幹医療機関なら免除可)

丸2日訪問診療を常にやってることが求められるので、案外僻地の小病院では条件を満たすのが厳しいのかもしれません。
看取りまで含めた訪問診療をしっかりやってる施設なら余裕かもしれないですね。
基礎領域の指定はこれからということで、そこ次第でまた制限が変わるかもしれません。

ーーー

(2)雑感


ということで整理してみました。
在宅専門医と緩和専門医はそのための業務を整える必要がありそうです。

これだけ資格が並んでくると、「とりあえず資格とっとけ!」ではなくて「自分のやりたい未来のために必要な資格は?」という選択の方がやはり重要になってくるんだろうなと感じました。
自分の内的キャリアを煮詰めながら、幅を持たせるための外的キャリア習得ってイメージ。
選択肢が「ある」と「ない」は全然違うんだけど、存在意義とか自分の価値とかが何だか揺らぎやすい総合診療領域においては、逆にこの選択肢が余計に後輩たちのハートをぐらつかせやしないだろうか……なんて老婆心ながら心配してしまいます。

 

自分自身が「山形の総合診療医としてどんな医療人を育成したいのか?」「そのためにはどんな外的キャリアを身につけておくべきなのか?」というところを煮詰めて、準備に取り掛かるべきなんだろうと思いました。

どう写るかわかりませんが、個人的には超前向きです。何をしたらいいか明確になったような気がするので! さあ、何を仕掛けていこうか!

1月の活動報告

明けましておめでとうございます。
2022年早々から世の中は騒がしくなってきました。コロナ禍の流行を受け、頂いていたお仕事にも制限が出始めています。そんな影響も踏まえて記録として残しておこうと思います。

 

①教育出前口座
実は今年度、家庭教育アドバイザーという仕事を請け負っております。
本来なら小中学校にお邪魔して、健康や教育に関する話をするような仕事みたいなんですが……、コロナ禍の中でなかなかそういった機会がなかったようです。
そんな中でボランティア団体に感染対策+セルフケアというテーマで1時間ほどお話してきました。コロナ禍の境目くらいで、今振り返るとなんとか開催できてよかった!という感じです。

感染対策はもちろんですが、セルフケアもすごく重要だなーと最近感じています。
人と人との交流でエンパワーメントされていたタイプとしては特に、交流の制限されたコロナ禍で気持ちが萎えてしまう時があります。どうしても自分を立て直せない時に頼れる小技、それがセルフケアと認識しています。
人に話すにあたり色々と文献を漁りましたが、漁った結果として自分のセルフケアの引き出しが増えました。自分の勉強もさせていただいてありがたい限りです。

 

ホームヘルパー講演会
人生で初めて、コロナ禍の煽りで開催中止になりました。
オンライン開催が多かったこともあって、実は中止が初めてという個人的に貴重な経験です。
ホームヘルパーの方へ感染症の基礎知識+感染対策+実際に手技もやってみる、というような内容を用意していたのですが……いやー残念です。

この数年の中でコンサートや試合などの安全性が色々検証されてきています。
その流れで勉強会の開催も安全性が保たれてくるといいですね。

 

世の中を見ていると、相当感染対策は浸透してきている印象はあります。
(逆にこれは本当に対策としてありなの?と思う時もありますが)
なんとかコロナ禍を乗り切っていけるよう、個人的にお手伝いできる部分は頑張っていこうと思います。